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自然・災害:更新2014/5/16

大相模 放射能汚染疑惑!?

小館部屋で起きた異変は相模協会が箝口令を布いているといわれているが、部屋の近所の人は誰もが知っていることである。先月の稽古中に、三段目の大山岡が幕下の大海原の突きが顔に入った際、よほど当たり所が悪かったのか土俵中央でうずくまってしまったことから始まる。

大山岡がやっと立ち上がると周囲の力士は一様に驚いた様子を見せた。そう、大山岡の鼻から鼻血が…。それもとめどなくあふれる鼻血。稽古を見ていた大雁屋親方は慌てふためいて部屋の奥に入っていき、稽古場に戻ってくるとその手にはガイガーカウンターが。大山岡の鼻、そして大海原の手にガイガーカウンターがかざされる。親方は数字が読めないので一所懸命、適当に結論を出そうと試みる。その結果、大山岡の鼻からは13シューベルト、大海原の手からは何と16シューベルトの放射線が出ているのが親方なりに分かった。
「こんなにシューベルトが多いと…魔王が今…坊やを連れてどっかに行ってしまってそれから…」

小館部屋は騒然となった。何かシューベルトがたくさんいるらしい。親方もたった今魔王に取り付かれてしまった。残された弟子たちはあっけにとられていたが、大山岡の鼻血が止まったので稽古が再開される。

1時間後。関取衆の稽古が粛々と進む中、大富井の上手出し投げが華麗に決まり、大栗田が顔面から土俵に落ちた。動けなくなる大栗田。駆け寄る同僚達。しかし、その囲みは一瞬にして土俵の外に散らばる。顔を上げた大栗田の鼻からは鼻血が…!ガイガーカウンターをかざす大雁屋親方。愛用の中国製ガイガーカウンターは新橋の路上で日本語が通じない外国人から大枚500円で買ったものだ。再び14シューベルト。そして念のため、土俵にもガイガーカウンターをかざすと、親方としては信じがたい結果が待っていた。「15シューベルト…!土俵はいつも清めていたのに放射線とか…!いつか光を放ちそこからマスが…ところでマスとサケって分類上同じらしいよね?」と再び部屋は騒然。何てことだ、この部屋にはシューベルトがいっぱいいる!たまたまこの日は別の部屋から関取が2人出稽古に来ていたが、大雁屋親方は「このことは黙っていてくれ…。この部屋にはシューベルトなんていない。魔王もマスも」

その1時間後、2人の関取はツイッターで親方の発言を拡散するのであった。ただ「シューベルトがどうこう」という話で拡散したので、親方がクラシック音楽好きという話が広まっただけに終わったのは不幸中の幸いか。

小館部屋はまず協会にお伺いを立てた。曰く、「弟子の顔と手から放射線が出ているみたいだ。あと土俵からも」協会はこの報告を受けて騒然となった。直ちに影響はないとしてもいずれは影響があるかもしれない。詳しくは分からないが鼻血が出たのが放射線の出ているよい証拠だ。協会は迅速な処置を指示した。すなわち、「除染」である。

さすがに弟子の顔や手を削いだりするわけにはいかないので、包帯を厚めに巻いておいた。大海原はいつもやっているところの食卓の上の料理を手で払うのがやりやすくなったようでただひとりご満悦の表情。しかし、土俵の除染だけはどうしようもない。やむなく、専門家を呼んで表面の土をはぎ、俵を入れ替えて、徹底的に除染した。放射能の弟子はもちろん隔離した。もうこれで鼻血を出す力士は出るまい。除染はうまくいったのだ。

ところが、稽古後にまた異変が。十両の大富井が、酒をあおった後、いきなり狂った牛のまねをし出したのだ。すわ、放射能か!しかし親方は冷静だった。「あれはいつものことだ」モーモーと大富井が暴れまくる。後援会の人達が辟易して去っていく。隔離された力士達はここ数日ちゃんこが与えられていない。小館部屋の日常は取り戻せたのだ。しかし、関係者達は知っている。2、3日もすれば親方が「…お前の鼻から13シーボルトの放射線が!」「日本地図返せェ!」「お前実はドイツ人だろ?」などと大騒ぎして今度は歴史マニアとして拡散されることを。並行してさらに数日もすれば餓死した3人の力士が発見されることを。そしてもちろん、その力士達の死は「病死」として発表されることを。放射能におびえる人々の暮らしは緩やかに、しかし慌ただしく過ぎていくばかりだ。


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